<蛍光灯が降ってきた>

ある晩のこと、日本料理店でおとなしくご飯をたべてると、携帯電話が鳴った。
「Y本です。大変なことが起きました」
沈着冷静なY本さんの焦りの声を聞くのは初めてだった。これは一大事、思わず聞いてしまった。
「どうしましたか?いよいよ台湾総攻撃ですか?」
「いやそうじゃない。今、天井から蛍光灯が落ちてきたんだ!一歩間違えば大怪我をするところだった」
「公安にねらわれてるんじゃない?最近なんか書かなかった?」
「そうかなあ。あす朝一番に外交人員房屋公司をよばなきゃ」

蛍光灯が降ってきた塔園外交人員公寓の一室

<中国の特色ある社会主義下における生活>
私達の事務所は塔園外交人員公寓というところにある。外国のマスコミの事務所は、外交人員公寓に限定されている。外交官と身分が同じとみなされているといえば聞こえがいいが、実は監視されている。その証拠に塔園外交人員公寓の東門の、向かって右側の詰め所は公安の詰め所なのだ。
どうしてこんなことをしているかと言えば、中国のマスコミは全て国家の管理下にある。政府・共産党のために報道している。テレビニュースは江沢民、李鵬、朱鎔基の順で出てくる。自分の国がこうなのだから、外国もそうだと勘違いしている。少なくとも、そうあるべきだと考えているふしがある。だから、スパイを働く可能性のあるマスコミは閉じ込めておけということだ。もちろん電話は盗聴されている。
その手口は追って淡々と紹介していこう。中国の特色ある社会主義のもとでのわれわれの生活とは、監視と嫌がらせがつきまとう日々なのである。だからこそ、B級ネタが湧きあがるのだが。

<昔はよかった>
石川郁さんという人が書いた「北京で7年暮らしてみれば」という本を読むと、10年前の外交人員公寓は、日本人生活者のあこがれだったことがわかる。しかし、今は全然事情が違ってしまった。
何がどうばかばかしいか、例を挙げればきりが無い。蛍光灯が降ってくるだけで十分だろう。
建物管理はいいかげんなくせに、外国人管理だけは厳しい。友人が尋ねてきたら、門まで迎えにいかなければならない、そんなアパートがどこにある?むかつく対応は「なんでやねん」コーナーを参照。
最初のうちは、警備員にへいこらしていたKAZUGONも、事情がわかるにつれ切れるようになった。
一時期、誰何してくる門番をいちいち怒鳴りつけていたら、もう誰も何も言わなくなって、フリーパス。
いいんだか悪いんだか。
ということで、外に住むことが許可された2年前からは、どんどん人が流出している。500戸ある部屋のうち三分の一はいなくなってしまった。残ってるのは東欧・アフリカ圏の人々。貧しい国々の大使館では、中国人服務員が見るに見かねて、ごはんをご馳走してあげることもあるという。家賃もわれわれとは全然違うらしい。中国の外交政策なのだろうが、何のことはない、先進国から巻き上げた金で発展途上国をもてなし、外交得点を稼ぐという姑息なやり方じゃないのか?
ああ、腹立たしい。腹も減って、何書いてんだか分らなくなってきた。
今日は超欲ボケじじいが西洋料理をごちそうしてくれるというが、どうなることやら。


(2000年3月29日)


級中国  蛍光灯が降ってきた

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