「わさび」2002.7.4


北京も今では、刺身や寿司が一般の人にも食べられるようになりましたが、その食べ方は日本とはちょっと違います。

日本では、ネタの引き立て役としてこっそり活躍しているわさびですが、その存在が大きく前面に出ているところが北京風。
小皿に注いだしょうゆに、ほぼ同量のわさびをよ〜く溶かして、「わさびソース」をつくり、刺身や寿司に染みるほど付けて口に入れます。

まわる寿司とわさび

もちろん寿司には、握られた時点でネタとご飯の間にわさびがペーストされています。
それでもさらに、わさび&しょうゆ味をたっぷりつけて食すのです。

ですから、寿司屋で泣きながら寿司をほおばっている大の男を見かけても珍しくありません。

寿司屋のもつ元来のイメージを変えた回転寿司。
中国に来た回転寿司は、寿司とわさびの関係をも変えてしまったようです。




「わりこみ」 1998.7.9

ある日マクドナルドで、レジにならんで順番を待っているとどうしたことかいつまでたっても自分より前にいる人間の数が減らない。
メンツが変わっているにもかかわらず人数が同じなのです。

社員食堂で、おかずを買う順番を待っていると、列の前方からこっちこっち、と私に向かって手招きする人がいます。
「ん?私のこと?」
この瞬間、私よりも後ろに並んでいた人が、手招きした人の
ところへ滑り込みました。
「あー、私のことではなかったのね。」
なんてのんきなことを言ってる場合じゃないのです。
それこそ、わりこみの現行犯。
初めから並んでいたかのような平然とした表情で、
おかずを買っているではあーりませんか。
それも、3人分とか5人分とか。

病院の小さな受付窓口はなぜか位置が高めにできています。
その小さな窓に10元札や5元札を持った何本もの腕がグイグイ
とつっこまれます。
同時に、内科!皮膚科!眼科!という声が、お札を持った
手の動きと一緒に飛びます。
中で、お金を受け取って切符を売るおばさんの辞書には、
「先着順」という言葉なんてありません。
ひたすら自分の目に近いところで動くお札から処理します。
私のようにちびの短い腕の者は、一番不利なわけです。

バス停に待つ人たちが、バスの接近に気付くと脇見をふらずに
バスに駆け寄ります。
バスが止まり、乗客が降りてきます。
降りようとする客を押しのけて、乗り込む客によって車内で
席取合戦が始まります。
こうなると弱いものが最後に乗車しますので、弱者用の席が
残っているはずがありません。

駅で切符を買うために並んでいると、やけに後ろの人が背中に
くっつき、ふーふーと熱い息が耳に届いてきます。
「ちっ、ちかん?」
と、睨んで振り向くと、ぜんぜんそんな様子はありません。
「うーん、痴漢じゃないにしても、そんなにくっつかないでほしいなぁ。」
後ろの人が気にする様子がないので、こちらは逃げるようにじりじりと
前に詰めていきます。
すると今度は私が、ちかん役になってしまうわけですが、前の人は
まったく気にしていません。
列に並んだひとりひとりのスペースがそれぞれの靴の大きさにまで
なり、この列を10歩離れたところから見ると長ーいムカデ競走の
仲良しチームに見えるはずです。
私はそんなつもりは毛頭ないのですが、これもわりこみを防ぐための
知恵らしいです。
わりこみ屋は半歩の隙間を狙っています。

ここはわりこみができない奴は一人前とみなされない社会のようです。
わりこみは生きていくための手段の一つで、これをしないと、
食いっぱぐれるとか、貧乏くじを引かされるとか、損をするような風潮が
あって、もうこれは中国人の習性と言ってもいいくらいの域に達しています

なにしろ当人たちにはわりこみしているという意識がないのですから。

人が自分の前にわりこめば、せいぜい口喧嘩くらいおきましょう。
とんでもないことに今や、自動車同士のわりこみが当たり前の時代に
なってしまい、北京でしょっちゅう見かける交通事故のほとんどの原因が、
この悪い「習性」によると思われます。
だから長期滞在の人ですら日本人はハンドルを持ちたがりません。

北京の歩行者が信号を守らないのは、信号を信用していないから。
それと自分が赤信号で待っているうちに、自分よりも先に道を渡る人が
いたら、それはとても損をしたような気がするからのようです。

食べ物にありつけないご時世でしたら、あさましくなるもの仕方がない
かもしれませんが、98年の北京を見渡せば、人を押しのけてまで手に
入れなくてはいけないものや権利はなくなりつつあります。
もうそろそろ、「わりこみ」を風化させる覚悟がほしいものです。



「ワンマンバス」 1998.7.20


地下鉄や電車という交通手段が発達していない北京では公共汽車(バス)が、長年に渡って庶民の足代わり。

赤白に塗られた、2両編成バスは、初乗りが5角。
2年前に初乗り1角が突如5倍に値上った時はぎょっとしましたが、皆すぐに慣れたようです。
(1999年12月には1元になりました)

バスにはたいてい運転手と各車両に1名ずつの切符売りが乗務していますが、見た目だけで日本のバスとは大きく違う点があります。

運転手は男性とは限らない
切符売りは女性とは限らない

バスの半分は、女性ドライバーです。
それも、ばっちりお化粧をきめて、フラフープみたいなハンドルを逆手に握り、ミニスカートでアクセルやブレーキを踏んでいるのもいます。

一方切符を売る車掌さんは、大きながまぐち型バッグを持って5角、8角...の切符を売り、定期券の提示をあおぎキセル乗車摘発にやっきになっています。
このお仕事をガタイのいいお兄さんやおじさんがやっていても、北京では自然な光景です。

バスの乗り降りの時に決まって流れる車内放送が、「先下!後上!」。
降りる人が先、乗る人は後。

2両編成バスは、乗降口が3つありますが、どれも押しくらまんじゅうをやらないと乗り降りができません。

北京の一部の路線を走るワンマンバスは、3つのドアのうち中央口を乗り口専用にしてあります。
乗り口のステップを上がると、料金箱があり無賃乗車の見張り乗務員がひとりついているので、正確にはワンマンバスではありません。

この種のバスは料金が5角均一の短区間走行なのですが、おつりが出ないという大欠点があります。

小銭の5角を持たずに乗ってしまい、10元札を出すと乗務員はただ、「つりはないよ。」と言うだけ。
しょうがないので他の客に両替を頼んだりするわけですが、なにせ短区間のバスですので、あわてている間に終点。
10元の没収です。

な、なによ、乗務員のあんたがおつりを用意しとくべきなんじゃないの!
いくらほざいても後の祭りです。

料金箱監視役が持つ小憎らしい道具。
それは使いこんだ一本の割り箸。
これを使って、料金箱にうまく落ちていかない紙幣をグイグイと押し込むのですが、おつりがでないのを知りつつ10元札を料金箱に落とす悲しいこと。

10元あればタクシーに乗れたのに。
なんとワンマンなバス。

所によっては、バスに乗る前に慌てて5角を用意する客のために、5角ショップが現れました。
ショップといっても、5角の色付き砂糖水やアイスキャンデーを売るおばあちゃんたちなのですが、これが結構いい商売やっているようです。

参考:5角=7〜8円

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